核医学検査装置

概要

核医学検査とは?

微量の放射性同位元素(ラジオアイソトープ:RI)と、臓器や組織に特異的に集まる薬が合わさったもの(放射性医薬品)を使って病気の有無を調べる検査です。目的とする臓器や組織に集まった薬は、そこから放射線を体外に向けて放出しますので、それをシンチカメラと呼ばれる専用のカメラを用いて画像にします。この画像から、病変部や機能がどのようになっているかがわかる検査です。

核医学検査の装置について

ドイツのシーメンス社製で、名称はSymbia(シンビア)T2(図1)という機種で、機能情報を持つシンチカメラ(SPECT)と解剖学的情報を持つ診断用マルチスライスCT (吸収補正・フュージョン画像目的)を融合し、同一寝台上で連続して撮影・検査できる装置です。

Symbia(シンビア)T2

SPECT/CTの利点

  1. 一度の検査で、核医学検査の画像とCT検査の画像が得られること。

     

  2. CTの減弱係数を使って、RI画像データに吸収補正ができること。

     

  3. Fusion(フュージョン)画像を作成できること。
    RI画像とCT画像を組み合わせて、任意の断層面の画像を作成することで、今までのRIの画像とは異なる解剖学的位置、形態情報を得ることができます。

RI画像(SPECT画像)+CT画像=フュージョン画像

RI検査の主な流れ

  1. 放射性医薬品を点滴のルート、もしくは直接注射します。
    (検査の種類によってはお薬を飲んだりする場合があります。)

     

  2. 放射性医薬品が目的臓器に集まるまで待ちます。
    (検査の種類によって、すぐに撮影する場合と数時間後~数日後に撮影する場合があります。)

     

  3. 撮像:体内から放出するガンマ線をシンチカメラで検出し、集積したRI画像を作ります。ほとんどの検査が装置の寝台に寝た状態で検査します。検査時間は、検査によって異なりますが40分~60分の検査になります。

    (検査の種類によっては、前処置があり、その場合は、放射線技師、各担当医師、看護師より説明があります。)
    (心筋シンチの負荷検査に限り、同意書に同意と署名をいただきます。)

核医学検査 種類

骨シンチグラフィ

骨シンチグラフィーはテクネチウム(99mTc) というラジオアイソトープを含んだ薬剤を注射して行う核医学検査です。この検査は注射した薬剤が、2~3時間後に骨に集積して骨の代謝や反応が盛んなところに集まる性質を利用して、骨腫瘍(転移)や骨の炎症、骨折の有無などを調べます。検査(撮影)時間は約50分ぐらいになります。

心筋シンチグラフィ

心臓の血管(冠動脈)が詰まっていたり、詰まりかけている場合、その先の心筋細胞に流れ込む血液の量が減少し、栄養と酸素が十分に届かなくなります。すると心臓の動きが悪くなったり、不整脈が出たり、最悪の場合は心臓の細胞が死んでしまうこともあります。心筋シンチは、血管のかたちではなく、その先の心筋細胞の状態を調べて、心臓の機能を確認することができる検査で、血流や代謝、交感神経機能をみるなど、いくつかの方法があります。 

201Tl 負荷心筋シンチグラフィ

この検査では、心臓に負荷がかかった状態と同じ状況にするために、わざと、心臓を負荷がかかった状態にさせ、201Tl  を注射して、どのくらい心筋細胞に血流が保たれているかをシンチカメラで撮像します。心臓に負荷をかけるのは、運動や薬剤によって行いますが、血圧や脈拍などを循環器内科の医師がきちんと把握しながらの検査になります(負荷時の検査)。次に、安静な状態で3~4時間後(負荷時の撮影終了から) 、心筋細胞にどのくらい血流が保たれているかを撮像します(安静時の検査)。この2つの画像(負荷時と安静時)を比較することで、負荷がかかった状態と安静な状態の心筋細胞の血流の状態にどれくらい差があるのかをみます。一回目の検査(負荷・撮影)時間が約50分で、2回目の検査(撮影)時間が約25分ぐらいになります。

心筋交感神経シンチグラフィ 123I-MIBG

心臓の周りにも神経がはりめぐらされています。心臓に障害(ダメージ)が起きると、神経機能も通常どおりの働きではなくなります。この検査では、神経(交感神経)の状態を反映する放射性薬品を注射したのちに、15分後と3時間後の2回、心臓を撮像します。この検査は、神経内科でも、認知症・パーキンソン病・レビー小体病の鑑別に使用されることもあります。


(その他の心筋検査)
心筋2核種検査(201Tl + 123I-BMIPP 脂肪酸代謝)
心筋2核種検査(201Tl + 99mTc-PYP 急性心筋梗塞検査)
心筋2核種検査(201Tl + 123I-MIBG 交感神経)
などがあります。

脳血流シンチグラフィ

脳血流シンチグラフィは、脳の血の巡りのいいところ、悪いところを画像化することができる検査です。また、認知症や変性疾患の鑑別診断や負荷薬剤を使用しての脳血管障害の病態評価も検査できます。

当院では、99mTC - ECDという放射性薬品を使用して、非採血法(パトラックプロット法)を用いて血流量を算出しています。検査時間は、定性検査(脳血流状態、認知症や変性疾患の鑑別診断)は、約40分ぐらいで、定量検査(脳血流量、負荷薬剤を使用しての脳血管障害の病態評価)は、約1時間ぐらいかかります。

肺血流シンチグラフィ 99mTc-MAA

肺血流シンチグラフィは肺血流分布を調べる検査で、 肺塞栓の早期診断や治療効果の判定、大動脈炎症候群の肺血流評価、肺高血圧の評価、左右シャント疾患の評価に使用されます。検査時間は、約50分ぐらいです。

腫瘍・炎症 67Ga シンチグラフィ

悪性腫瘍が疑われたとき、高熱が続き炎症の部位が特定できないときに行う検査です。また、甲状腺未分化癌、分化癌未分化転化の診断、サルコイドーシスの診断にも使用される検査です。放射性薬品を投与後約42~72時間後に撮影し、その分布を画像にします。

肝受容体シンチグラフィ 99mTc-GSA

局所肝機能を評価する検査で、肝切除術前における術後残肝機能予測、肝内胆管癌などにともなう局所肝機能障害の評価、肝癌の経動脈的塞栓療法などの治療前後における局所肝機能の評価などの目的に行われます。

<その他の検査>

(甲状腺摂取率検査)
(甲状腺シンチグラフィ)
(副甲状腺シンチグラフィ)
(副腎皮質シンチグラフィ)
(副腎髄質シンチグラフィ)
(蛋白漏出シンチグラフィ)
(消化管出血シンチグラフィ)
(腎シンチグラフィ 静態 動態)

などの検査もあります。(その他の検査は当院では極端に稀な検査です)

RI Q&A

SPECTとは?

SPECTとは、(Single Photon Emission Computed Tomography )シングル・フォトン・エミッションCTの略語で、体内に注入したRI(放射性同位元素)の分布状況を断層画面で見る検査のことです。体内から放出される放射線の分布を画像化する際、検出器が体の周りを回転させて断層画面を作成します、「単光子放射断層撮影」。

核医学検査とエックス線検査の違いは?

エックス線検査

エックス線管からX線が発生し、体内を透過するときの骨や臓器のX線吸収率の違いで画像を構成します。

核医学検査

核医学検査は、放射性医薬品を体に注入した後、体内から放出するガンマ線等をシンチカメラで検出して画像にしています。

PETとの違いは?

PETは、(Positron Emission Tomography) ポジトロン・エミッション・トモグラフィーの略語で、ポジトロンCTともいわれる核医学診断装置のことです。「陽電子放射断層撮影」PETとSPECTの撮影原理は、人体から放出される放射線を体の外から測定するものでよく似ていますが、PETは、使用する放射性同位元素が、陽電子(ポジトロン)を放出する物質を使用します。よって使用される機器構造もSPECTと異なります。もう少し簡単に原理を説明すると、陽電子(ポジトロン)放出アイソトープというものを体内に注入すると、体内の陰電子と結合して消滅放射線(γ線)を発生する性質を利用して、それを検出器で測定し、コンピュー タで処理して断層画像化するものです。PETで使用されるRI(放射性同位元素)は、炭素、酸素、フッ素、窒素などの生体中に存在する元素なので、SPECTよりもなおいっそう代謝などの様子を正確に把握でき、がんなどの進行度の診断などに優れた能力を発揮します 。 (現在、当院では、PETの導入予定はありません。)

人体の被曝の影響は?

放射性医薬品には、薬による副作用の心配はほとんどありません。検査で受ける放射線の量は、胸やおなかのX線撮影と同じ程度かそれ以下でとても弱く、また薬そのものの放射線も時間と共に少なくなり、尿や便として体の外に出てしまい、時間と共に無くなってしまいますから、本人自身や、周辺の人の身体への影響についてもほとんど心配ありません。

検査を受ける注意点は?

妊娠しておられる方、または妊娠している可能性のある方、および授乳中の方は、原則として放射性医薬品を投与しないことが望ましいので、必ず事前に申し出てください。核医学検査は、ほとんどが予約制になっています。薬の有効期限が当日限りのものが多いため、予約をした日時に必ず検査を受けてください。また検査の種類によっては、検査前や、検査当日に守っていただく注意事項(食事制限・下剤の服用・検査時の服装等)がありますので、医師、看護師、放射線技師、等の指示に従ってください。

フォトギャラリー

ここから管理区域です
測定する機器 
モデルさんに寝台に座って頂いてます
心筋シンチの検査とかは寝た状態で腕をあげてもらいます
SPECT撮影時は、こんな感じでシンチカメラが体を回ります
SPECT/CTの操作室です
全身のシンチや心筋のシンチ等はこの向きで検査します。
脳血流シンチはこの向きで検査します。