外科治療について

ヘルニア手術

ソケイヘルニア、大腿ヘルニア、閉鎖孔ヘルニア、臍ヘルニア、再発ヘルニアなど患者さんの状況に合わせて適切な治療法で対処したいと考えています。
腹腔鏡手術は、ヘルニア手術においても選択肢の1つとして急速に拡がってきています。
もちろん当院においても施行可能です。
腹腔鏡手術でのヘルニア修復の特徴は、お腹の中(腹腔内)からヘルニアを直接観察することにより、従来の方法よりヘルニアの状態を直接確認できる点が優れており、修復する部位がはっきりとわかる点が最大の利点です。

3箇所の穴をあける。臍下に12mmの創、左右下腹部に5mmの創をあける。
腹腔鏡(カメラ)で確認すると、ヘルニアの穴(門)が確認できる。
ヘルニア用メッシュ挿入後

鼠径(そけい)ヘルニアとは

そけいヘルニアとは、いわゆる”脱腸”のことです。
太もももしくは、足の付け根の部分を「そけい(鼠径)部」と言います。
本来ならお腹の中にあるはずの腹膜や腸の一部が、鼠径部の筋膜の間から皮膚の下に出てくる下腹部の良性疾患です。 そけいヘルニア(脱腸)は、子供の病気と思われがちですが、むしろ、鼠径部の筋膜が弱くなる中高年層に多い病気です。
成人のそけいヘルニアは、自然に治らないため、治療には手術が必要になります。

鼠径(そけい)ヘルニアの症状は?

押すと元に戻るそけい部の柔らかい膨らみ(普通は指で押さえると引っ込みます)/そけい部の突っ張り感、不快感、違和感、痛み/そけい部が引っ張られる感覚

※膨らみが急に硬くなったり、押さえても引っ込まなくなることがあり、お腹が痛くなったり吐いたるすることがあります。
これをヘルニアのカントン(陥頓)といい、緊急手術が必要です。

鼠径(そけい)ヘルニアの治療法は?

そけいヘルニアは、投薬で治すことは出来ません。
そけいヘルニアは、現在では人工補強材(メッシュ)を使用して修復を行う方法が主流ですが、「メッシュプラグ法」、「クーゲル法」、「腹腔鏡下そけいヘルニア修復法」などが行われています。

「メッシュプラグ法」とは?

「メッシュプラグ法」は、現在日本で最も多く用いられている手術法です。
ポリプロピレン製のプラグを筋膜の弱い部分に入れて、ヘルニアの出口を塞ぎます。
ポリプロピレンメッシュは、50年ほど前から使用され、プラグは、現在世界で400万個以上の臨床試用の実績があり、体内使用の安全性は確立されています。

メッシュプラグ法のメリットは?

  • ピンポイントで修復するため、再発症例や前立腺手術歴がある患者さまにも行える。
  • 剥離が少ないため、手術時間が短くてすむ。
  • 全身麻酔を用いずに手術が出来る。

「クーゲル法」とは?

クーゲル法は、ヘルニアの穴を筋膜の内側から塞ぐ合理的な方法です。
腹膜と筋肉の間に、メッシュを入れますので、腹圧(お腹の圧力)がかかると、メッシュはより強く筋肉に押し当てられて密着します。
クーゲル法は腰椎麻酔(下半身麻酔)で手術できるので、体にかかる負担はより少なくてすみます。

クーゲル法のメリットは?

  • ヘルニアの再発率が低い
  • 腹圧により、メッシュがより安定する
  • ヘルニアの起こりうるすべての場所を同時に覆うことが出来る
  • 手術時間が短くてすむ
  • 全身麻酔を用いずに手術ができる

「腹腔鏡下そけいヘルニア修復法」とは?

腹腔鏡下そけいヘルニア修復法は、腹腔鏡(細い管の先端に付いた手術器具)を使用して、手術を行う方法です。腹腔鏡下手術では、従来から行われて いるお腹を切開する開腹手術(オープン法)と異なり、まずお腹に5mmから10mmの小さな穴を3ヶ所程度あけます。そのうちの1つの穴から腹腔鏡を入れ てお腹の中を映します。その像をテレビモニタで観察して、ヘルニアの場所を見つけ、別の穴から入れた手術器具を外科医が操作して患部の治療をします。

腹腔鏡下手術のメリットは?

  • 傷が小さく美容的に優れている。
  • 傷あとが小さく痛みが少ない。(開腹手術では5cm程度)
  • 痛みが少ないため、日常生活に早く戻れる。
  • ヘルニア発生部位が左右の2ヶ所にあっても全く同じ傷で治療できる。
  • お腹の中(腹腔内)を観察しながら手術を行うので、症状が出ていない小さなヘルニアの見落としが少ない。
  • お腹の中から確実にヘルニアの穴を見つけメッシュを充てるため再発が少ない。

当院では、よりメリットの高い「腹腔鏡下そけいヘルニア修復術」を第一選択としています が、全身状態やご希望に合わせて、メッシュプラグ法やクーゲル法を選択しております。陥頓症例に感染する可能性が高い場合は、メッシュを使わない従来法も 行っており、どのような手術にも対応することができます。

そけいヘルニアでお悩みの方がいらっしゃいましたら、いつでもお気軽に外科外来を受診してください。

胆石症、胆嚢ポリープ、胆嚢炎などの胆嚢疾患

従来より腹腔鏡手術を多く行っており、小さい傷で患者さんの負担を軽くするように行っております。

胃癌・大腸癌・小腸腫瘍などの消化管疾患

胃癌、大腸癌手術においても当院では適応となる
患者さんにおいては、腹腔鏡手術を施行しております。
どんな患者さんでも出来るわけではありませんが、
腹腔鏡で手術可能な患者さんは近年増えています。腹腔鏡手術においては、腹腔鏡により顕微鏡手術
のように細かく解剖(病気の状態を含めて)を確認
することが可能であり、精度の高い手術が可能と
なりました。
また、術後の合併症についても、腹腔鏡手術では、
キズの感染が少なく、キズが小さいことにより術後
の腸閉塞も少ない傾向にあります。抗癌剤治療も組み合わせて、個々の患者さんに
最適の治療を提供していきます。

『腹腔鏡下胃切除術』の皮膚切開の位置
腹腔鏡下胃切除術
腹腔鏡下大腸切除術』の皮膚切開の位置
腹腔鏡下大腸切除術
腹腔鏡下胃切除創
腹腔鏡下大腸切除
腹腔鏡下直腸切除

肝臓癌

肝臓がんには、肝臓そのものから発生してくる原発性肝癌と転移性肝癌に分けられ、原発性肝癌はその由来する細胞によって、肝細胞がん、胆管細胞がん、その他のものに分けることができます。

肝細胞癌

肝細胞がんの原因は、その90%以上がB型肝炎ウィルス、C型肝炎ウィルスの感染によっておこる慢性肝炎や肝硬変から生じてきます。
その他アルコールや非アルコール性の脂肪肝炎等からも発生し、その頻度は増えてきています。
原発性肝がんの中で肝細胞がんの占める割合が95%と最も多いため、一般的に日本では肝がんというと肝細胞がんのことを指します。

治療方法は、肝切除/肝動脈閉塞術/ラジオ波焼灼療法/肝移植術 の4種類があります。

肝切除

外科的にがんを含めた肝臓の一部を切除する方法です。がんを体から切り取ってしまうため、他の治療法に比べて確実なのですが、肝機能に応じて切除可能な肝臓の容量は限られているので、場合によっては手術の適応とならない場合もあります。

肝動脈閉塞術

太ももの血管から肝臓の血管まで管を通して、肝細胞がんに酸素や栄養を供給する動脈だけに抗がん剤を投与したり、動脈につめものをしてがんに酸素や栄養が行かないようにして、がんを殺してしまう方法です。

ラジオ波焼灼療法

超音波などで腫瘍を確認しながら皮膚からがんに向かって針を刺して、針の先端からラジオ波で、がんを焼き殺してしまう方法です。

肝移植術

肝臓全てを切り取り、他の人からもらった肝臓を移植する方法ですが、適応が限られます。治療法の選択は患者さんにとって最善の方法がありますので、ぜひご相談ください。

胆管細胞癌

胆管細胞癌は、原発性肝癌のなかで2番目に多い腫瘍とされていますが、全体の5から10%とされています。原因が特定していないため、進行した状態で発見されることが多く、また進行速度が速い腫瘍のため、発見時には切除困難であることも多くあります。
外科的切除ができれば、唯一予後を改善する可能性があります。しかしリンパ節転移がある場合、予後が非常に悪いというデータがあり、そのような場合化学療法をまず行う場合もあります。
手術後の5年生存率は、約30%前後と報告されており厳しい現実もありますが、今後化学療法の併用により改善してくる可能性もあります。

転移性肝癌

転移性肝癌、特に大腸癌肝転移症例に対しては、第一選択の治療として確立し、その治療成績は肝切除以外の治療に比べ明らかに良好と報告されています。
また、その他疾患の肝転移に関しても肝切除によって長期生存が得られることが、少数ながら報告されており、適応について必ずしも明確ではありませんが、可能な限り肝切除術を行うことが好ましいと思われます。
肝転移は、消化器癌(大腸癌、胃癌)はもとより頭頸部癌、乳癌、胆道癌、腎癌、悪性黒色腫、平滑筋肉腫、等々多岐にわたっており、常に肝転移を念頭において、これらの疾患の診断、治療、術後の経過観察が必要となります。
実際には、大腸癌がもっとも多く、次いで胃癌、平滑筋肉腫などですが、実際には大腸癌以外は、肝切除の対象となる症例の割合は、はるかに少ないのが現状です。
肝切除は、肝部分切除が基本となりますが、腫瘍の大きさや場所によって決定されます。
肝硬変ではない事が多いので、大きな肝切除も可能です。
肝臓に転移が見つかっても、手術による切除が有効な場合がありますので、あきらめないでご相談ください。

胆管癌

胆管とは、肝臓で作られた胆汁を十二指腸に排泄する管のことで、肝臓の中にある肝内胆管と肝臓の外にある肝外胆管に分けられます。
肝外胆管はさらに、肝門部、上部胆管、中部胆管、下部胆管に分けられます。
初期には、症状が無いことが多いですが、がんの進行に従い胆汁の流れが悪くなり、黄疸が出現することによってはじめて判ることが多いです。
皮膚や目の白い部分が、黄色くなったり、尿の色が茶色になったり、皮膚のかゆみが現れることもあります。また、胆汁が腸内に流出しなくなると、便の色が白 色になります。超音波やCT検査で診断をつけ、内視鏡的な胆管の造影検査で黄疸をとる処置を行って確定した場合は、可能であれば外科的手術が必要となりま す。
一般的な治療法として、手術、化学療法(抗がん剤)、放射線療法がありますが、外科的に切除する治療が最も成績が良く予後に貢献すると言われています。
術式は癌の存在している部位によって違いますが、肝切除が必要な肝臓に近い側の胆管癌から、膵臓の切除が必要になる十二指腸に近い側の胆管癌など様々です。
気になる症状がある場合は、当院外科にご相談ください。

胆嚢癌

肝臓で作られた胆汁を溜めておく袋のような臓器を胆嚢と言い、胆嚢は肝臓に張り付くように存在しています。胆嚢および胆嚢管にできる癌を胆嚢癌と言います。

胆嚢癌は、我が国では60歳以上に最も多く、女性に多い癌です。
原因ははっきりしていない事が多く、症状が出にくいこともあり、進行して見つかる事が多いので予後が不良な癌です。
手術は、進行がんの場合は肝切除を伴った拡大手術が必要となります。
ただし、早期で見つかる場合はほぼ100%根治する事もわかっていますので、積極的に人間ドッグなどで超音波検査を行うことで早期発見が大事です。
超音波検査は、体に負担のまったくない検査ですので、積極的に検査を行うことをお勧めします。

膵癌

膵癌は、腹痛や黄疸などの明らかな症状が出てきた時には、からり癌が進んでいる場合が多く、進行速度がきわめて速い場合が多いため、予後が非常に悪い癌として知られています。
膵癌治療の第一選択は、切除ですが、術式は膵癌の局在によって異なります。
十二指腸に近い膵頭部に癌が出来た場合は、膵頭十二指腸切除術が選択されます。
膵臓に近い膵尾部に癌が出来た場合は、膵体尾部切除術(脾臓を一緒に合併切除することが多い)を行います。
近年化学療法の進歩もあり、gemcitabine(ジェムザール)と言うお薬を投与することで、予後が向上することがわかっています。
何か気になる症状等ありましたら、お気軽にご相談ください。

肝胆膵疾患セカンドオピニオン外来

近年医療の進歩は目覚ましく、同じ消化器癌に対しても内科的治療あるいは外科的など様々な治療法が生まれてきています。当然、同じ疾患であっても、病院や 医師によって治療法が異なることもあります。主治医から説明された治療法があなたの病気にとって最適なものかどうか、他の医師の意見を聞いてみて納得の上 で治療を受けるのは、きわめて大切な事です。
特に肝臓、胆道、膵臓疾患は外科治療において高度な技能が必要であり、特に悪性疾患は難治性であるために、手術適応や治療方針について判断が異なる事があります。
当科では、診断・治療について、豊富な経験を持つ日本肝胆膵外科学会より認定された肝胆膵外科高度技能指導医によるセカンドオピニオン外来を開設しました。ご希望の方は、当院地域医療連携室までご連絡ください。